リサーチ

 
風になびくカーテンを見て風に吹かれたときの感覚を想起したり、バタンと大きな音を立てて閉まる扉を見たときに痛みのような感覚を覚えたりするように、見覚えならぬ「感じ覚え」を抱くような動きや現象が身の回りには様々な形で存在します。

このように、ある物理現象を見たときに、観察者自身が見た動きを擬似的に感じる現象は、運動共感またはキネステティック・エンパシー(kinaesthetic empathy)と呼ばれています。近年の研究によれば、人の動きに対してのみならず、動物や物の動きに対しても運動共感がはたらくことが知られています。しかし、人間のからだとは形の大きく異なる物体の動きに対して、我々はどう共感しているのでしょうか。また、物の動きに対する共感は、どのようにデザインすることができるのでしょう。

運動共感の感覚をことばにするのは容易ではなく、その具体的な特徴を捉えることが、研究のなかで大きな課題となりました。しかし試行錯誤の末、自身の身体感覚をメタファーとして用いることによって、物の動きに対して感じられた運動共感を徐々に捉えることができました。様々な動きや物理現象について観察するなかで、運動共感のエレメント(kinaesthetic elements)が、連鎖的に見つかってきました。このウェブサイトでは三好賢聖の博士研究の中で、解剖学や知覚心理学を参照し分類した15のエレメントを示しています。

下の映像では、運動共感の観点からデザインした7つのコンセプトを示しています。三好の他、ロイヤルカレッジオブアートでデザインを専攻する3名のデザイナーと、身の回りのオブジェクトや動きについてデザインしました。機械の得意な動きに発想を縛られず、柔軟に動きを探索するため、人形劇師と協力し、7つのコンセプトそれぞれのふるまいを再現しました。